ウクライナ支援報告 第二便 「小さな医務室から」

コロナ感染の隔離基準を終えたところで、私は一人宣教学校のカイロスから避難民センターに移って来ることになりました。

                                                                                                

到着したときにはすでに6名のかたがたが医務室に待機されていました。早速、スタッフの通訳者が手伝ってくれて助かりました。センター以外にお住まいのかたがたも含まれていました。殆どの方が糖尿病、高血圧、腰や肩、膝の慢性痛でした。みなさん体重が15kgほどオーバーしておられる人ばかりですので投薬で解決はしないことをご説明しましたが色々と事情があります。センターでは、定番のケイタリングでまかなっていて、炊事ができないことも大きな壁になっています。また、たとえ、炊事が出来る環境にある方々でも栄養指導で良くなるのかという疑問があり、今効くお薬がほしいということで訪れていますのでなかなか期待には応えられないというジレンマに悩まされますが、これはどこの国でも程度の差はあれ同じであろうかと思います。

みなさんのニーズがあるかどうかはわかりませんので、まず自分自身の健康のためにも毎日楊名時太極拳の八段錦と24式をしていましたが、次第に6−8名の希望者が朝と夕に訪れてご一緒するようになりました。参加の皆さんにお配りした太極拳についての英語での説明を最後に参考までに掲載しています。

 

このスチャバからバスで2時間余のところにおられるウクライナの25名の母親と子どもたちが1週間このセンターで過ごされたので、いっぺんに避難センターは忙しくもにぎやかになりました。スチャバの観光をしてリラックスできて楽しい思い出をつくるということでした。日本人グループの若い青年とカナダからこられた大学で看護学を学ばれている女性も一緒にツアーに参加されて良い交わりをされていました。またアフリカのモーリシャスの宣教師ご夫妻がこられていましたが、その奥様がウクライナ出身ということで通訳をしてくださいました。

ツアーから帰ってきた人々に日本のグループは、折り紙、ペイント、生け花教室、お寿司の作り方教室などを提供して、子供も大人もさらに異文化に触れることができて楽しんでいただきました。その中で私はフラワーアレンジメントに参加させていただきました。

彼らがここを立つ時は土曜日でスタッフもいない中、カナダからの女性と私の二人でお見送りをしました。彼らがバスに乗る前に、みんなでウクライナ国歌を歌った時は私も皆様もこみ上げるものがありハグを何回もしてお別れをしました。

ウクライナ国歌サイト

https://www.youtube.com/watch?v=Ztznut0fme4&ab_channel=%D0%98%D0%BB%D0%B8%D1%8F%D0%90%D0%B3%D1%83%D1%82%D0%B8%D0%BD

8月24日はロシアからのウクライナの独立記念日です。しかし、未だに戦争は終結しそうにもありません。家族一緒にウクライナを出ることは許されていないので家族がバラバラなのです。スマホで電話は可能ですし、映像でも会話はできますが悲しい情況にあることには違いありません。彼らの悲しみに寄り添いたいと思ってきましたが、どう接していいのか、もどかしさを感じます。せめて共通の楽しみや一緒にお食事をしたり、お茶を飲んだりしながら少しずつ彼らが語りたいことに耳を傾ける以外ないのかもしれません。

ツアーの方々が帰られたので、センターはまた元の落ち着いた日常生活にもどりましたが、今度は89歳の女性がコロナ陽性となりました。隔離をしたくても部屋がないので仕方なく狭い一室で3人が過ごさざるをえません。ですから、濃厚接触者も感染者並の扱いになるというわけです。こういう事態を予測してN-95のマスクを持参していたので3人にお渡ししましたがなかなか徹底してマスクをしてもらえないので悩みました。熱は高熱から脱して微熱が続いていましたが、気になったのは酸素濃度が93−94%から上がらないので重症化にならないかだけが心配でしたが、幸いに息苦しさもなく過ごされ段々と内服なしでも平常熱になりましたので、8日目に再検査しましたがまだ陽性です。10日目にはウィルスも感染力が低下すると言われているので、11日目にするとまたうっすらではありますが陽性でした。これは困ったと文献を道夫医師に探してもらい、高齢者には感染力はなくても陽性が続く場合があるということなどがわかりました。一応ルーマニアの事情にあった避難センターにおける方針を作り責任者の同意を得ました。参考に添付します。

コロナ感染時の隔離、検査基準
(1) 抗原検査は、症状のある人にのみ行う。

(2)陽性と判定された感染者は、直ちに個室に隔離し、その世話は1人だけにし、できるだけ適切なマスクで注意深く観察する。

(3)接触者は、少なくとも5日間は他人との接触を極力避けるか、N-95等の特殊マスクを着用し基本予防策を守り、可能な限り行動制限を行う。

(4) 感染者が無症状となり、翌日に1回抗原検査を実施すると陰性を示すので、24時間後にもう1回検査で陰性を確認後隔離を解除する。
 
(5) 頻繁な検査ができない場合は、10日間隔離し、10日目または11日目に1回抗原検査を行った後に解除する。

18歳の青年が夜中に窓で頭を打って出血したと部屋をノックしてきたのでその応急処置をしたり、二回目の日帰りツアーの子供が自転車で転び足首を捻挫したりで私が余り得意でない分野の処置もありましたがなんとかクリアできたのは幸いでした。

夜の9時頃に何らかの子供どうしの諍いが原因で転んで、9歳の少年が多量の鼻血出血を出し,なぜか警察まできたらしく、救急車で運ばれたことがあったのですが、私は全く呼ばれず、しかも爆睡していたらしく翌日に報告されるまで知らないということが起こったのです。こういう時にこそ医師としてのニーズがありそうなのですがどうしたことだったのでしょうか?

男の子は幸いに骨折はなかったのですが、母親が医務室を訪ねてきて「子供が不安になっているので精神安定剤はないですか?」という相談を受けました。「子供ですしお薬で対処するのはよっぽどでない限りしないので一度息子さんに会わせて欲しい」と言いましたらすぐに呼んでこられました。この時はもっとリラックスをしてもらいたかったので、医務室ではなく私の部屋には子供用のいすとテーブルがありましたので5歳くらいの弟と母親も含めて一緒にいてもらいました。この母親と子供は通訳なしでもある程度英語でのやり取りができました。ことの事情は母親から聞きましたが、母親が心配するほど少年は動じてはいないようなのです。悪夢もなく眠れていますし、恐怖でおどおどした様子もなさそうなのですが、ただ、またいつか殴られるのではないかと言う不安はあるようでした。彼を押したという風に言う方もいますし、母親はかなり興奮しながら拳で鼻を殴られたと主張していて、子供も押されて滑ったのではないと言っていましたので殴られたと解釈しました。かなり鼻は浮腫が出ているので「ウクライナの祖父母に隠したいのだがどうしたらいいでしょうか?治りますか?」と母親のほうがパニック状態のようにおもいました。事実を話せば良いことなのになぜ隠す必要があるのかということまでは聞けなかったのですが、話を傾聴しているうちに母親も落ち着いてきたのがわかりました。加害者の父親とも話をしたらしいですが一言の謝罪もないということでそれも大変フラストレーションがある様子でした。それで、まずは様子を見ながらその子供とは距離をおいて過ごしましょうということになりました。その後は、なにも起こらずその加害者のご家族は以前からも問題をおこした経由もあって警察を呼んだということでした。数日後ドイツに移っていかれたことで解決となりました。

私は大学時代より指圧が好きでしたので、薬のいらない、肩こり、腰痛を訴える方々に毎日マッサージとして提供をしています。やみつきになって毎日して欲しいというスタッフの方や不眠症でいつも頭痛があるかた、慣れない施設の掃除をして肩から腕にかけての傷みのある人、腰がいたい人など来られています。こちらのほうのニーズが高いのかもしれません。

突然夜間にボランティアの女性が、一人暮らしの女性が何ヶ月前にもコロナ感染し4日前にも自己判定で陽性がでて息が苦しいと言っているということで、北カロライナからボランティアで運転をしてくれている人とスタッフの人と一緒に水や果物、ヨーグルトなども持参して行きました。私としてはすぐにでも救急車搬送かもしれないと心準備をしていたのですが、抗原テストは陰性で、酸素濃度も97%で問題なく、この方も全く救急性がないことで安心しました。帰りに祈りましょうということで私が英語で祈ろうと思っていたのですが、ご自身が祈るというのでルーマニア語で力強く祈られ元気を取り戻されたようでしたので安心して帰りました。

また、ご家族の一人が以前より精神的な症状がでているので相談したいというかたや、花粉症のかた、アレルギー反応なのかニキビなのか判別できない人の皮膚科へのコンサルタントに付きそったり、外部の人ですが手の甲のしびれがきた方が神経内科にいくというので付きそったりということもさせていただきました。医師でも余り英語が得意でないというので医師の同伴よりも通訳の方でお役にたっています。

医務室には寄付していただいた薬品がベットの上にものっているのですが、全てルーマニア語でしかも量が日本での2−3倍なので使いにくく頻度の多い薬はなくなってきていて果たして買ってまで備える余裕があるのかどうかも検討しなければなりません。ウィーンに在住している日本人のナースがこちらに応援に来てくださっていたのですが、その方が奇麗に薬品を整理してくださり見違えるほどきれいな医務室になったのです。それ以降は指圧も私の部屋ではなく医務室に来てもらえるようになってとても快適に使うことがきて感謝の他ありません。

なかなか医学的なことは秘守義務があるために公開できませんので表面的なことに言及していますがご理解の程お願いします。

次回、レポート3便では、こちらで出会った人々との交流などのお話をさせていただきます。

ここに滞在するのもあと4日となりました。皆様のお祈りとご心配をいただいて元気にしております。心から御礼申し上げます。

太極拳の説明

                                           Health、 Friendship、 Peace
Tai Chi is popular in Japan.

It is a health practice based on the ancient Chinese martial art of integrating the body, breathing, and mind. We can practice for all ages depending on their health and physical fitness.

Relax your body and mind, which have become fatigued due to stress, and maintain and restore your health.

   I was so happy to be with you even for a short time.

   I believe God protects you and gives you blessing abundantly.

   I perform Tai Chi with my prayer       Megumi Ono

https://www.youtube.com/watch?v=r9w1gvrQuFQ&ab_channel=%E3%82%8A%E3%82%87%E3%81%86%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%80%82%E6%A2%81%E6%88%90%E5%AE%9FRYO%2CSeijitsu

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