令和4年11月27日 礼拝メッセージ:証集:海外での主のめぐみ:アメリカミネソタ州での証(2)「メイヨー・クリニックにおいてのチャプレン訓練」

上の写真は、ミネソタ州の州都ミネアポリスです。

 

聖書:

ヨハネによる福音書9章:1-3節
「またイエスは道の途中で生まれつきの盲人を見られた。

弟子たちは彼についてイエスに質問して言った。「先生。彼が盲目に生まれついたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。その両親ですか。」イエスは答えられた。「この人が罪を犯したのでもなく、両親でもありません。神のわざがこの人に現われるためです。」

前奏:

 

夫は一年間のベテル神学校での宣教師プログラムを終えた後は、イギリスに続き臨床的な熱帯感染症の多いタイのマヒドール大学の熱帯医学部の修士課程へ入学することになりました。私はまだ神学校での学業の途中でしたので子供たちと一緒に寄宿舎に残りました。私の卒業まで滞在できるかと思っていましたが、2年間無給でしたので経済的に日本に帰国を余儀なくされました。その最後の夏に、夫から「メイヨー・クリニックでのCPE(Clinical Pastoral Education)を受けてみないか?」という提案がありました。

 

CPEとは:
病院やホスピスの牧師、スピリチュアル ケア提供者を訓練する主要な研修方法である。介護者が提供するケアを改善するために学生に実際の場面でのミニストリーの機会を提供する、多文化的かつ宗教間の違いを超えた経験。4単位をとると正式なチャプレンとしての資格を得ることができるとされている。

メイヨークリニック St. Marys Campus

 Mayo Building

     

メイヨークリニックは合衆国でもハーバード大学と並んで最も有名な病院の一つですので果たして私のようなものが、訓練生として採用されるのか甚だ疑問でした。担当の教授が私を推薦してくださいましたが6名の学生だけが選ばれるということでした。神様がこの道を開いてくださるように祈りました。幸いにも日本人ということで認められたのか研修の許可がおりました。その時は、すでに夫は日本に帰国していて仙台の石巻市の病院で勤務をしていました。夏休みを迎えていた子供たちでしたが、長男は帰国しないで残りたいというので夜泊まってくれる日本人のアルバイトを探しました。米国は18歳未満の未成年を夜一人にさせておくのは違法だったのです。次男と三男は私の実家にお願いしました。

 

アメリカ市民権を持つ中国人で私のクラスメートのご主人さまが、私を寄宿舎から病院のロチェスターまで、3ヶ月のミニ引っ越しを手伝ってくれたのでした。それは1999年の夏でした。初めてマッキントッシュの古い重たいパソコンを持ってメイヨーに出かけていきました。余談ですが、私のメールアドレスは、onomegumi99@me.com と99という文字を記念につけました。その頃のパソコンはEメイルとワープロ機能、英単語の修正機能だけがあった時代だったのです。

 

最初の宿直の時の体験をお話ししたいと思います。

さすがに緊張して一睡もできず不安で一杯でした。すると、突然深夜に電話が鳴ったのです。「ついに来た!」「はい、チャプレン小野です。何か御用でしょうか?」

 

第一日目でしたので、専属チャプレンでカトリックのシスターが一緒に行ってくださったのですが、私は隠れるようにして彼女の後ろからついていきました。

 

すると、青白い顔をして、体全体をブルブル震わせながら、車椅子の男性が泣いておられました。聞いてみると、ペンキを塗り替えるために二階で仕事をしていた時に誤って落ちて頚椎を損傷し下半身麻痺になったと話されました。そして続いて、「妻は熱心なクリスチャンで私にも教会に行こうと何度も誘ってくれましたけど行きませんでした。だからこうなったのは私の罪のせいでしょうか?」と苦しい表情でシスターに訴えたのです。

 

シスターは彼の手をやさしく握ってゆっくりと語られました。「そんなことは決してありませんよ。神様は罰を与えるようなお方ではありません。」と彼に平安が与えられるようと祈られたのでした。こうして、私は毎日この患者さんを訪問することになったのです。口数の少ない方でしたが、ありありとその苦しみは日増しに深まっていくようでした。

 

ある日、彼のご両親と兄弟が面会に来られました。すると、お父様が突然泣きはじめて、「小野チャプレンさん、私は長い間アル中です。どうしてもやめられないのです。息子がこうなったのは私のせいなのでしょうか?」お母様も泣いておられました。予想外の状況で私もどのように対応すればいいのか焦りました。心の中で、「イエス様、お助けください!今あなたのお言葉をください!」と祈りました。

 

「神様は愛のお方です。息子さんが教会に行かないからだとか、お父様のお酒のことで神様がこのような事故を起こしたのでは決してありません。それだけは信じましょう。何故このような悲しいことが起きたのか私にもわかりません。でも、神様は必ずこの悲しみから希望を与えてくださるに違いありません。ご一緒に信じましょう。祈り続けましょう。」そして、このヨハネによる福音書をお読みしました。特に3節を繰り返したのです。イエスは答えられた。「この人が罪を犯したのでもなく、両親でもありません。神のわざがこの人に現われるためです。」その日は短く私がお祈りして帰りました。

 

ある日、ふと、星野富弘さんのことを思い出しました。彼の書いた絵葉書を夫に取り寄せてもらい送ってもらいました。

彼は体育の教師で生徒たちに鉄棒で宙返りの模範演技をしたところ失敗して頸髄を損傷してしまったのでした。その結果、首から下の運動機能をまったく失うという障害を負ってしまったのです。その苦しみからイエス様に向うまでの葛藤が長くありましたが、信仰を得てのちに口に筆をくわえ、絵と詩を描いて人々に大きな感動を与えているというお話をその患者さんにしました。彼はご自分よりはるかに重症である星野さんの境遇を知ってとても励まされたようでした。

 

しばらくたって、又ご家族がいらした時に全員で手をつないで祈ったのですが、お母様の番になった時に彼女は泣きながら小さな声で「祈れません。」と言われました。しばらくの沈黙の後、今まで硬く口を閉ざしていた患者さんご本人が感謝の祈りを始めたのです。私は鳥肌が立つほど感動しました!ご家族も泣いておられました。でもその涙はもはや悲しみの涙ではありませんでした。そして、その患者さんは2ヶ月後、笑みを一杯に浮かべて奥様に付き添われて退院していきました。

 

イエス様の愛を信じて率直に助けを求める時、私達の弱さや悲しみや不安は必ず癒やされていくものだと信じます。すぐに祈った結果が見えないことがあっても、神様は決して傍観しておられる方ではありません!実に私達の痛みを知っておられて共感をしてくださる神さまです。愛のまなざしで私達を見守ってくださり、さらにご計画の中で共に生きてくださるお方であるという事をお伝え出来れば幸いです。(つづく)

 

後奏:

 

祈りの課題とお知らせ:
12月4日(日)に水泳のマスターズ大会が和歌山市で行われます。金槌でしかも子供時代に溺れたことでPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス)だった私が、近くのB&G プール教室に通い始めてこの11月で2年になりました。水泳教室の諸先生方のご指導と道夫宣教師の助言で水を怖くなくなったばかりか楽しくなり感謝で一杯です。大会では50メートルの背泳ぎをします。目標は最後まで泳ぎ切ることです。みなさん!応援、お祈りお願い致します!ということで来週の証はお休みさせていただきます。
おすすめの記事